心中心臓

あの子が死んだと
極彩色の映像が
無彩色の紙切れが
しきりに語る
見慣れない天井の下で
僕は初めてそれを知った

初めは左の紅差しの指
其処からだんだん
錆びついて
の腕を失った

紅き薔薇は
今なお此処に
半分はあの子の
半分は僕の
心臓の上
飾られたまま

あの子が死んだと
極彩色の現実が
無彩色の人間が
忘れ去った頃
家へと帰る道の途上で
僕は初めてそれを見た

軋む体を動かして
その場所へと
導き終えた
両の脚が固まった

紅き薔薇は
今なお此処に
半分は死に
半分は生きる
心臓の上
飾られたまま

あの子が逝った
相生いの木の下で
片破れが鳴き
両の心臓が死んだ