曼珠沙華の戀

あな、貴方を殺さばや
花踏みしだく月喰ひの
蠢く蟲の罪をや教えむ
ありつるらひが身を焼かふ
忌まわしき檻の中

口鬱しやせむ
飼はるる身の心を
見するの眸が
笑みたるぞましき

みつる徒花
めかしきが今宵
白濁なる闇のにて
赦し乞ひ啼き

声ぞ、嗄れ涸れて
遅咲きの花の咲くごとく
貴方をやは殺すまじき
声ぞ、止め処なき

紅きの煌めきに
朧なる影を見ぬ
落ち流れぬるは原色の
椿の首に似たりけむ

あな、貴方を殺さばや
ありしを解き放たむ
さ手に残りたる
悪しき咎人が末裔かし

花の霞が最中
消えて往にたる彼に
伸びる腕
冷たさの果ての肌を
掻き抱く

あな、貴方を殺さばや
吾のみのになむすべき
さ手に残りたる
恋しき罪人かし

貴方を殺さばや
眼球が視姦の罪だに
貴方を殺さばや
盲目が愛の畸形にや

憎き厭わしき貴方が唇に口づけを