熾り 自死 窓外 空絵 嗤う猫  宣戦   籠飼い  煩い   音裏 パズル 甘毒   片恋
 突月  夜鉄 教室 甘夢 嗜好 隷属  水冷 墜落  献血  詞遊び  黄昏 四感 希鳴 低飛行
私速度 蝶車 小夜 約束  嫌い 重ね 逆蝶 水無月 銅葉 樹下 回廊迷路 白月 春風 不実 一目惚 時間 in 休息 
  迷子  嘘吐き 隠蔽    距離 蜂蜜  耐えの 額咲き   打ち紙  

で上に戻れます。



熾り

「おこりのみ やおてずてふね よとぐでし」
 熾りのみ 夜織てず蝶音 夜と愚で死

暖炉の火の勢いは増すばかり。
夜は停滞し、暁は遠く、蝶の羽音が耳に響く。
深まっていくだけの夜と、自らの愚かさにより、
私は死を与えられる。

(「シルヴィーとブルーノ」(ルイス・キャロル著)の解説に
載っていた“俳句”に漢字を当て、勝手に解釈)




自死

自らの心臓を
抉り
潰し
息絶える



窓外

窓の外。
あの人が見ていた。
──まるでストーカーね。
あの子が笑った。



空絵

描いた空を、
本物にする魔法を知っている?

──その絵を、本物だと思えばいいのよ。



嗤う猫

の口が紡ぐのは、
悲痛な真実と
嘲りの嘘だけ

彼の(かの)





遅すぎる夜。
早すぎる朝。
青という色に、呑まれた。



宣戦

死に損ないの戦闘服
生きていく為の





抱きしめて抱きしめて抱きしめて抱きしめて……
叫んだ心が、割れた。





灰色の空、去り
藍色の空、漂い
今、
闇色の空。

灰色の空は、色彩をなくした世界のような、モノクロームの空でした。
藍色の空は、見知らぬ誰かの、溜め息のシャボン玉で出来ています。
闇色の空は、僕らが身を浸すべき、夜の為にありました。




籠飼い

あの人がよそ見した。
私に気づかれた事、気づかずに。
私以外を見るのなら、
籠飼いをしてあげましょう。

これは寵愛。
あの人を愛するが故の。
これは鳥愛
あの人を繋ぎ止める為の。

籠飼い(かごかい)・鳥愛(ちょうあい)





垂れ流されるだけの言葉
価値の失われた文章
そこに詩は産まれない



煩い

匂い煩いの女の心
彼の悪、私が貰った
私の恋、彼に囚われた
彼の生、私が掴んだ
私の魂、彼にわれた

彼の罪、私が生かした
私の心、彼に殺された
彼の死、私が与えた
私の、彼に奪われた

攫われ(さらわれ)・魄(たましい)





結ばれてしまった言葉たち
解きほぐし難い一節





墜ちていく羽根
翼をもがれた私は人間



音裏

鼓膜の裏側
聞こえぬ音を拾う場所



パズル

詩への暗号
誰にも解けない
言葉のパズル
誰かの為にそれはない



甘毒

心臓に空いた穴
誰も塞いでくれないから
私はそっと
甘い毒を詰め込んだ





唇が感じた冷たさと
舌先で感じた生温さ
胸を下ってゆくのは熱情





冷たい指先に、
私の言葉は注がれて
空白のページはいつも、
意味を持たない心で埋め尽くされている



片恋

空は夜を映し
夜は闇を映し
闇は光を映し
光は光を映し出す

光はいつも
ナルシシズムを貫いて
闇はいつでも
片想い





初めて彼と逢ったのは
霞ヶ丘の迷い並木の空の下
切り貼りされてつぎはぎの
蒼に居座る彼がいた



突月

突き出た月が、
月出た、月が。
欠けていて、
重たい光を放つ月。

突月(とつき)





旅をする。
旅をする。
どこへでも行けることの証明のために。

旅をする。
旅をする。
僕の片割れに出逢うために。



夜鉄

サバランの夜、
鉄道模型が走り出す
ケーキ屋の奥の窓から
線路が惹かれて
ケーキ屋初の個々炉行き

個々炉(こころ)



教室

窓の外の教室
ここよりも退屈そう
鏡の国へ遊びに行った
アリスのように
旅をしに行こうか
朝の光が休息し
の眩しさが現れる前に

午(ひる)



甘夢

白い薔薇の視る夢は
いつでも甘い恋の味
ショートケーキに飾られた
苺の気持ちも知らないで



嗜好

好きなものを好きだと云えたら良かったのに

好きなものを
好きだと云えないまま
綺麗なものを
綺麗だと云えないまま
欲しいものを
手に入れられないまま

私の夜は、
狂気を受け入れてしまった



隷属

尻尾振って
生きる為に媚びを売る
生きる為に尻尾を振るの





いつでもどこでも
雨でも濡れずに
点と点を繋ぐもの



水冷

氷はいつしか
雨になり、
冷たい泪で
体を洗った。

水冷(すいれい)



墜落

叫ぶ事をやめて
苦しみを忘れて
コンクリートにキスをする





暗闇の中叫び
君の名前呼ぶ
私の声さえもう届かない



献血

南の犬の血
献血ルーム





もれた僕の声
文字裏に隠れて
意味も消え去る



詞遊び

反意の意志
私への殺意
長い毛髪は
挑発の証拠

犯意の縊死
私が殺した
月の真昼に
憑き物が闇

証拠(あかし)・縊死(いし)





ダイヤモンドはハートの代わり
分かりやすくて単純な
天の邪鬼な心の表れ



黄昏

かみのたそがれ
たれぞかれ
よくをいだきて
ひとにおつ



四感

気を付けよ
よろこびの、頭文字へと繋がっていく
抑えきれずに放たれる

死滅せよ
あいの果て、泪が映す安らぎと
落日の手の温もりに溶けて

戸(ど)



希鳴

うソナタ
幾度となくて巡り続ける
戦慄の歌声で

願わくば、
願わくば、
繰り返し、繰り返し。
紡ぐ言葉の意味を失い
奏鳴曲の白骨化

ソナタの願いは叶わない

希鳴(のぞみなく)・希う(こいねがう)
  ・嗟(ああ)・奏鳴曲(そうめいきょく)



低飛行

パチンコ玉で撃ち落とす
急接近の外来種
触れられて毒で死ぬ前に



私速度

とろっ子
トロッコ
走ります
自分流儀
気取って
うそぶく
とろっ子
トロッコ
走ります

私速度(わたしそくど)



蝶車

シャドウに描く舞いあげは
蝟集の異形が闇に咲く
蝶とは常に名ばかりで
黄色い線の内側に
烏合を集めることすらできぬ



小夜

月の夜に啼く鳥は
泣く泣く誰かを呼ぶ声と云う
ナイチンゲールが呟く言葉は
囲われ飼われた籠の名か



約束

綺麗な儘の私を飾って
君の眸に仕舞って頂戴
決してふたり忘れぬように
柩でねむる私の首には
あなたの眸の水晶玉を
決してふたり離れぬように





自問自答。
立ち尽くす
答えはいまだ
見つからない



嫌い

弾痕を持たぬ人が欲しい。
あるいはそれを使わぬ者が。
の相手がであると、
誰がいつ、決めたと云うのか。

私はが嫌いです。

女(わたし)・男(あなた)



重ね

醜い心の臓腑をどうか
覆い隠してくださいまし
鎧のように 手のように
重ね合わせて私を護る



逆蝶

さかしま蝶々
土にくちづけ
視覚をつぶして
此岸におさらば

此岸(しがん)



水無月

六つの月は白皙美人
一重のに映るあまたよ
白粉いらずのその頬は
枯れた後にぞ淡く
紅染

眼(まなこ)・紅(べに)・染む(そむ)



銅葉

銅の葉、黒い葉、拾ったの。
たった一葉、花園で。
花のありかを探してみても、
紅い
で怪我して終わり。

銅葉(どうば)・棘(いばら)



樹下

夜露に濡れた袖の冷たさ
クラブアップルの孤独と似ている
の寂しさに泣く、落葉

秋の日差しが注がれる庭
ガーデンシクラメンの
絨毯を敷く
朝の眩しさに咲く、真紅

夜(よ)・絨毯(じゅうたん)



回廊迷路

翡翠揺れる夜の回廊
眠りの精の生む静謐に
乙女の
れの

迷い込んで




翡翠揺れる夜の回廊
眠りの精の生む暗闇に
乙女の亡骸
紫屍の影

りきって

果てる

夜(よ)・眠りの精(ヒュピノス)・衣(ころも)
  ・擦れ(すれ)・音(おと)・廻り(めぐり)・紫屍(しし)



白月

白昼の月
真白満ち月
誰の目にも映らぬ鏡
瞳を上げれば 雲隠れ
白と蒼の対照の中

満ち満ちて
いつか
欠けるでしょう

白昼の月
真白の欠け月
誰の姿も映さぬ鏡
瞳を下せば 
の盲目
醜悪なる喧噪の中

欠け失われ
いつか
又満ちるでしょう

白月(しらづき)・真白(ましろ)・満ち月(みちづき)・二(ふた)



春風

風吹く丘に緑が宿る
彼女が来たと知らせる者は
軽やかに
爽やかに
楽しげに 踊る

森の土に色彩が灯る
彼の吐息が彼女をくすぐり
新たな種が生まれて芽吹く
軽やかに
爽やかに
楽しげに 笑い



不実

ガラス玉の未来
映し出された悪夢の夜
抱えきれない秘め事を
わたしはそっと
薔薇の花心に閉じ込めた
それからずっと
この庭で花は実らない

不実(みのらず)



一目惚

視線がふらふら
ひとり歩いて

君の眸にぶつかった



時間

あちこちかちこち
ゆるりと刻んで
君とのデート
満喫チュー



in

ときめきをひとつ、角砂糖。
あまく揺れて、
混ざるロイヤルミルクティー。



休息

シンプルな言葉、
優しい音楽、
温まるための紅茶。

落ち着く部屋で、
お洒落な喫茶店で、
自分の好きな場所で聴いてください。

ささやかで、幸せな、
柔らかな笑みの広がる場所、
拡散せよ。





哀しい時に泣けるよう、
僕は歌い続けよう。
叫んで啼いて、眠りにつくまで。





左の目の中
硝子の破片
最後に映る
君のまぼろし





夕焼けの幻ではない
現実の焔の色に、
色彩をなくした私は
ただ立ち尽くす。



迷子

なくした物を捜すため、
車に乗り込むふたり。
森に迷い、帰り道さえなくした。
……あの日に。





とりとめのない私の脳は
くるくる廻って回転木馬
あの人だけが乗っている



嘘吐き

嘘を吐いた。
私に
嘘を吐いた。
私が

これがそうだと認めたくない
本当のことは云いたくない
誰にも秘密
ひとりぼっちの私の嘘



隠蔽

刻々と、淡く淡く
白に溶けて沈み消えゆく
一点の色もついには禁じ
果てに残るは空っぽのココロ
埋める代わりに
黒を纏ってこれを隠した





った 暗闇に怯え
溺れるように伸ばす腕
されど 眩い光に畏怖を注いで
独りぼっちを
り続ける

夜のさなかの籠り唄
繭の中死す胡蝶の悪夢

その芽を開けば見えるもの
総て塞いで安堵する
何にでもなれる恐ろしさ
未来の代わりの安息を

──半ひきこもり。自主性の。

瞑った(つむった)・眼(まなこ)・貪り(むさぼり)





逃げ場のない生
死はなお思い通りにならず
願うは小瓶に眠る毒薬

手の先の赤
熱いと痛いに生を感じて
に残るは虚しき無傷

小さな死すらも抱けずに
前へも行けず 止められもせず
哀しき宵闇 沈むのみ

後(あと)





感情の檻に閉じ込められて
叫ぶことが出来ない理由は
喉の奥潜む 鈴のさび
玲瓏と響く自尊心



距離

君と僕との関係は
彼女が見ている月と雲
触れ合うように重なって
互いを見つめることすら出来ない



蜂蜜

蜂蜜ひとさじ
カップに注いで 回転木馬
喉を駆け抜け 残されたのは
甘い香りと温かさ

ほっと息つく束の間の
安らぎと休息を





光に惹かれる虫のよう
暗闇のなか目を向けて
呼吸は絶えず 虫の息



耐えの

にじりより、
せりあがり、
おしよせて、
せまりくる。

痛みは常に喉の奥。
留めておくは罪と知れ。
零して悟る、哀しみの。



額咲き

ひらひら舞うは
一重の薄紅
蝶のような佇まい

ふわふわ揺れて
風との舞踏
円を描いて回るだけ
決して飛び立つことはない

──額咲き紫陽花。





この想いが、灰に変わって、
あなたに降りそそぐ、

気づいても、分からずに、
あなたはそれを受けとめて、つもり積もる、
白くなるまで、

あの子がそれに気づいたら、
それを払って落とすでしょう、
きっと、分からずに、

そう、なればいい、

そうして、
この孤悲の終わりに、
わたしはそっと、を閉じることでしょう。

瞼(まぶた)





ぴーちくぱーちく すずめの子
幼稚園児の集団は
ことりの集い
ぴーちくぱーちく すずめの子



打ち紙

金の
 燃え上がり
の赤 彼女へ至る

総ては最果ての黒へ

崩れ落ちていく泪を
に還すための

舞う蝶は紅く
墜ちて朽ちて灰となる

打ち紙(うちかび)・炎(ひ)・端(は)・天(そら)





軋む床
足踏みするだけ
一歩も先へ 進むことなく





綺麗な言葉で飾り立て
美しい死を纏っても
結局私はここに立ち
瞳を逸らせず君を見ている




















coming soon.